『We Are All in the Dumps with Jack and Guy』は、アメリカの絵本作家・詩人であるモーリス・センダック(Maurice Sendak)によって描かれた、詩的な絵本です。1993年出版。美しくも暗く力強いこの作品は、従来の絵本とは一線を画し、社会的テーマを含んだ深いメッセージと独特のビジュアルで知られています。
英語絵本「We Are All in the Dumps with Jack and Guy」の紹介
あらすじ(Summary)
物語では、ジャック(Jack)とガイ(Guy)という2人の男の子が登場します。2人は、家のない子どもたちや、おなかをすかせたネコたち、トランプのような姿をしたふしぎな人たち、そして病気のねずみなどに出会いながら、町のゴミや古い物がたまった場所で冒険をします。そこで出会った人たちを助けようとしながら、少しずつ希望を見つけていくお話です。
感動的な場面
- ジャックとガイがホームレスの子どもを救おうと決意する場面
→「見て見ぬふりではなく、助けようとする」その姿勢が胸を打ちます。 - 病気の子ねずみが“Red-nosed”というユーモラスで切ない描写で登場するシーン
→風刺と優しさが共存する、センダックらしい筆致です。 - 終盤、子どもたちが一体となり「希望」や「連帯」のようなイメージが立ち上がる場面
→言葉数は少ないながら、絵と余白で語る感動があります。
子どもの想像力を刺激する描写
- 擬人化されたカードマンたち(トランプの兵隊)は資本主義や社会階層を象徴し、現実の風刺としても読める。
- 巨大な猫がゴミの山を支配している世界という構図は、夢と悪夢の中間のような不思議な雰囲気。
- 都市の“捨てられた空間”を舞台に、ファンタジーと現実が交錯するセンダックの世界観。
繰り返しのリズムが心地よいフレーズ
- 原作は詩的なナーサリーライムで書かれており、繰り返しやリズム感が特徴です。
“We are all in the dumps
Jack and Guy
Went out in the rye…”
- 音の響きやリズムが心地よく、暗いテーマでも耳に残るよう工夫されています。
- 特に「Jack and Guy」という2人組の名前が繰り返されることで、物語に安定感と安心感をもたらします。
まとめ
『We Are All in the Dumps with Jack and Guy』は、単なる童謡絵本ではなく、子どもの目を通して現代社会の影や不条理に問いを投げかける深い作品です。シンプルな言葉と大胆な絵の対比が、読者の想像力を強く刺激し、絵本という枠を超えたアートと文学の融合としても評価されています。

英語絵本「We Are All in the Dumps with Jack and Guy」の英語学習法
英語表現・文法・単語
よく出てくる基本単語
単語 | 意味 | 学習ポイント |
---|---|---|
dumps | ゴミ捨て場・どんよりした気分 | タイトルにも使われる象徴的な単語。比喩表現にも注目。 |
rye | ライ麦畑 | イギリス童謡的な語彙。文脈で覚えるのに適している。 |
hunger | 飢え | 抽象名詞。子どもたちの境遇を象徴する語。 |
cards | トランプ(カードマン) | 擬人化されており、社会的なメタファーにも。 |
plague | 疫病 | 「plague baby(病気の赤ちゃん)」として登場。やや難語だが印象に残る。 |
英語表現・文法の特徴
詩のような語り口
- 原作は2つのナーサリーライム(英語の童謡)をベースにしており、省略された主語や倒置表現が多く見られます。
- 例: “Jack and Guy
Went out in the rye,
And found a little boy with one black eye.”
現在形・過去形が混ざった構成
- 絵本では時制があまり強調されず、雰囲気やリズムを優先した構成になっているため、感覚的に英語をつかむ練習に最適です。
比喩・象徴表現が豊富
- 「We are all in the dumps」は直訳ではなく、「みんなつらい状況にいる」ようなニュアンスで解釈するのが自然です。
発音のコツ
- dumps /dʌmps/
→ 「ダンプス」。/ʌ/ の発音を口を大きく開けず、軽く下げると◎。 - rye /raɪ/
→ 「ライ」。my と同じく、/aɪ/ の2重母音に注意。 - plague /pleɪɡ/
→ 「プレイグ」。/g/ の音が最後にくるが軽く発音。 - rhythm and pacing(リズムと間)
→ 文の切れ目を意識して、テンポよく読むと詩の雰囲気が伝わりやすいです。
読み聞かせの方法
絵と文を一緒に味わう
- 文字だけでは意味が取りづらい表現もあるため、絵の情報と文をセットで説明するのがポイントです。
- 例:「plague baby」→ 絵を見せながら「この赤ちゃんは病気で苦しんでいるのかもしれないね」と補足。
声に出して“リズム”を楽しむ
- この作品は一種の“詩”としての読み方が合っています。
- 同じ語尾で韻を踏む行があるので、抑揚と音の響きを意識して読むとより味わい深くなります。
読み終わったら感じたことを聞いてみる
- 「どうして“ゴミの中”にいたのかな?」
- 「ジャックとガイはどんな気持ちだったと思う?」
→ 英語で答えられなくても、日本語で感じたことを話し合うだけで、深い読解と表現力につながります。
活用ポイント
『We Are All in the Dumps with Jack and Guy』は、語彙学習・英語表現・感情理解・読み聞かせのすべてにおいて、豊かな学びを提供してくれる絵本です。
まず語彙面では、「dumps」「plague」などやや難しい単語も登場しますが、絵や文脈によって印象深く学ぶことができます。また、詩的でリズムのある英語表現に触れることで、文法や意味を超えて「英語を音で感じる力」を養うことができます。意味をすべて理解しなくても、耳と感覚で楽しむ読み方は、言語に対する柔軟性を育てる絶好の機会です。
さらに、物語には貧困や助け合いといった社会的なテーマが含まれており、登場人物の行動や気持ちを読み解く中で、子どもたちは自然と「共感する力」や「考える力」を養えます。
読み聞かせの際には、リズムと抑揚を意識した音読を行うことで、作品の詩的な美しさが際立ち、聞き手の集中力や感情移入を引き出すことができます。
このように、本作は単なる英語絵本ではなく、「言葉」「音」「社会」「感情」など、多角的な英語学習に活用できる一冊です。

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